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Halozyme社($HALO)の新技術;抗がん剤の点滴時間を短くする

こんにちは、病院薬剤師のやくごろうです。

今回は、「Halozyme社(#HALO)の新技術;抗がん剤の点滴時間を短くする」についてです。

2021年2月22日の薬食審医薬品第二部会にて、「ダラキューロ配合皮下注」の承認が了承されました。

「ダラキューロ配合皮下注」は、もともと多発性骨髄腫に使用されていたダラザレックス点滴静注にヒアルロニダーゼを配合し、皮下投与を可能にした製品です。

これにより、4時間程度(初回は7時間程度)の点滴時間を要したダラザレックスが3~5分で投与可能になりました。

これを可能にしたのが、Halozyme Therapeutics社の新技術;ENHANZE® technologyです。

近年本邦でも盛んな外来化学療法への追い風となり、今後も多くの薬がこの技術を使用することが予想されるため、ENHANZE® technologyについて調べたことをまとめます。

それでは見ていきましょう。

ENHANZE® technologyとは

ENHANZE® technology とは

組み換えヒトPH20ヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を用いた薬剤送達技術

rHuPH20は、皮下のヒアルロン酸(細胞外マトリックス)を分解することにより、皮下の組織を一過性に変化させることで、同時に注射された薬剤や液体の吸収と分散を容易にする。

皮下注射された薬剤は、全身吸収が起こる前に皮膚のヒアルロン酸を多く含む細胞外マトリックスを横断しなければなりません。

このマトリックスの構造と組成により、皮下注射での注射量は約1〜2 mLが限界とされてきました。

rHuPH20は、皮下空間でヒアルロン酸を解重合し、分散と吸収を促進させます。

皮下空間内でのこの局所的かつ一過性(24~48時間程度;ヒアルロン酸の半減期が短いため)の作用により、薬物投与が容易になりました。

参考;米国添付文書

やくごろう

つまり、皮下組織の構造変化を利用して「高分子薬品の皮下吸収」と「投与液量の増加」を可能にした技術です。

臨床試験の結果

臨床試験PhaseⅢの結果では、

多発性骨髄腫患者522名に対し、

Daratumumab 1800mg 固定容量皮下注 と 16 mg/kg 静注が比較されており、

効果と薬物動態の非劣勢

インフュージョンリアクションが少ない傾向

が示されています。(Lancet Haematol. 2020 May;7(5):e370-e380.)

世界で承認済みの製品

海外では、リツキシマブ(リツキサン)とトラスツズマブ(ハーセプチン)ですでに承認されており、最近トラスツズマブ/ペルツズマブの合剤も承認されました。

日本でも、トラスツズマブ/ペルツズマブの合剤がPhaseⅢ臨床試験中です。

世界で承認済みの製品
  • DARZALEX FASPRO™
    (ダラザレックス, with ヤンセンファーマ)
  • Phesgo™
    (トラスツズマブ + ペルツズマブ, with ロシュ)
  • Herceptin® , Herceptin Hylecta™
    (トラスツズマブ, with ロシュ)
  • MabThera®, RITUXAN HYCELA™
    (リツキシマブ, with ロシュ)
  • HYQVIA®
    (免疫グロブリン, with Baxalta)

リツキシマブは悪性リンパ腫の多くのタイプで第一選択であり、トラスツズマブもHER2陽性乳がん・胃がんで第一選択となり、対象患者数も多いです。

やくごろう

乳がん患者さんは比較的若く、働きながら化学療法を行う方も多いので、患者さんにとってもメリットが大きいかもしれませんね

Halozyme Therapeutics社の開発パイプライン

Halozyme Therapeutics社の開発パイプラインでは、 さらに多くの各大手製薬会社とタイアップし、多くの臨床試験を進めていることが公表されています。

引用:Halozyme webサイト

適応がん種が増えつつあるアテゾリズマブ(テセントリク)やニボルマブ(オプジーボ)もあり、今後更なる使用増加が期待されています。

  • 今後も次々に登場してくる抗体医薬品(高分子医薬品)に応用できること
  • 世界中で医療費抑制のために外来治療を推進していること

などを考えると、とても重要な技術かもしれませんね。

Halozyme社(#HALO)の株価

Halozyme社(#HALO)の株価は

ボラティリティは高いですが、SPY(SP500)よりも上昇していますね。

新薬の開発は臨床試験の結果がネガティブだった場合の損失が大きく、承認されるまではかなりリスクが高いとされています。

$HALOのENHANZE®はすでにいくつか承認された薬からロイヤリティを得ていることと、同じ技術が使いまわしできるので、これからは新薬開発よりはギャンブル性は低くなると思っています。

独自の新薬として開発していたPEGPH20は断念され、ENHANZE®に集中することが発表されています。

改めて株価を眺めると、製薬会社の新薬承認での株価上昇をキャッチするのはむずかしそうですね…

承認よりもずっと前の、第三相試験の結果に左右されている印象があります。

収支報告や決算など、会計の知識はまだ勉強中ですので、他の詳しい方に譲りたいと思います。

やくごろう

今後、新薬開発と株価の関係もまとめてみたいと思います。

2021年Q1決算発表

2021年5月10日、2021年Q1決算発表がありました。

ダラザレックス皮下注の発売により売り上げ大幅アップ+キャッシュフローアップという結果でした。

まとめ

  • 売り上げ前年同期比2,540万ドル→8,900万ドル
  • 2021年売り上げ予測3,750万~3,950万ドル(前年比40~48%成長)
  • 営業利益予測2,150万ドル→2,350万ドル(前年比49~63%成長)

ダラザレックス製品の進捗

  • 日本でダラツムマブ皮下注製剤承認
  • カナダでアミロイドーシスに対しボルテゾミブ、シクロホスファミド、およびデキサメタゾン(D-VCd、DCyBorD)と組み合わせたダラツムマブ皮下製剤が承認。
  • FDAでは迅速承認

その他

  • ブリストル・マイヤーズスクイブはENHANZEとニボルマブの第3相研究開始を発表
  • argenx社はENHANZE使用efgartigimodについて慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)への臨床試験登録開始
  • argenx社はENHANZE使用ARGX-113について臨床試験中

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