新薬やニュースざっくりまとめ

新薬勉強ざっくりまとめ2021年4月28日



こんな方へ
  • 新薬がどんどん出てきて、毎回把握しきれない!
  • 新薬のどの情報が重要かわからない!
  • 今後その新薬を扱うかわからないし、まず要点だけ知りたい!

毎日激務の薬剤師は、新薬の情報をタイムリーに把握することはほとんど無理ですよね。私は病院薬剤師として大規模総合病院で勤務していますが、今後扱うのかもわからない全ての新薬を調べる時間がないので、ざっくり特徴だけ把握することにしました。

そこで、この記事では新薬の特徴と要点をざっくり簡単に現役病院薬剤師やくごろうが解説します。

この記事を読めば、これから世の中に出てくる新薬を時間をかけずに勉強でき、いざ必要になったときに調べることがとても楽になります。

毎日激務で、新薬について簡単に把握したい薬剤師の方におすすめです!

2021年4月28日、厚生労働省 薬事・食品衛生審議会医薬品 第一部会が開催され、新薬の承認可否が審議されました。

※ざっくりまとめ用ですので、正式な名称や用法用量は参考資料などから確認お願いします。

※正式承認は未ですので、ご注意ください。

新薬勉強ざっくりまとめ:審査品目

ベリキューボ錠

成分名:ベルイシグアト
メーカー:バイエル薬品
申請適応:慢性心不全。ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

前回2021年2月25日の部会では、慢性心不全患者に対する他剤との位置づけや情報提供体制が議論され、継続審議となっていた。

慢性心不全患者に対する新作用機序の新薬。可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激することで血管拡張させ心負荷を軽減する。

VICTORIA試験では、左室駆出率が低下した慢性心不全(EF<45%のHFrEF)を対象に標準治療へ上乗せで心血管死または心不全入院のリスク軽減。

収縮期血圧100 mmHg未満の低血圧、長時間作用型硝酸薬使用例、eGFR<15 mL/min/1.73 m2は除外された。

対象患者の60%が3剤併用(βブロッカー+ミネラルコルチコイド阻害薬+ACE阻害薬・ARB・エンレスト)であり、15%がエンレストを使用例。

VICTORIA試験:Vericiguat in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction. N Engl J Med. 2020 May 14;382(20):1883-1893
Google翻訳でも結構読めます。

論文では、「心不全薬物療法は副作用のため退院後2〜4か月でガイドライン推奨療法のアドヒアランスが低下するが、ベリキューボ服用開始後12カ月で10mgを維持できた患者は89%であった」と記載され、アドヒアランスの重要性にも触れられています。

【慢性心不全患者に対する新薬】

下記の「やくごろうPick up」でまとめています。

  • コララン:HCNチャネル遮断薬
  • エンレスト:アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬
  • フォシーガ:SGLT2阻害薬

アロキシ静注

成分名:パロノセトロン塩酸塩
メーカー:大鵬薬品工業
申請適応:18歳用量の適応追加申請。抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)

がん化学療法誘発性悪心・嘔吐(CINV)に対する第2世代5-HT3受容体拮抗薬として18歳以下での用量追加申請。

第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬よりも遅発性嘔吐の予防において優れる。

新薬勉強ざっくりまとめ:希少疾病用医薬品へ指定

エクリズマブ

メーカー:アレクシオンファーマ合同会社
予想される効能・効果:ギラン・バレー症候群

商品名:ソリリスとして

  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制
  • 非典型溶血性尿毒症症候群における血栓性微小血管障害の抑制
  • 全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)
  • 視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防

に次ぐ適応追加に向けて臨床試験中。

ギラン・バレー症候群は、根治治療がなく不可逆的な後遺障害を残す例は約20%、約 5%は致死的状態に重篤化するとの報告されている。

薬価は60万4716円/300mg/V(1回の治療で2~3V使用)

患者数の少ない希少疾病で高い薬価で承認→適応拡大で利益も拡大する戦略ですね。

【希少疾病用医薬品の指定条件】

  1. 我が国における対象患者数が5万人未満であること。もしくは、対象疾患が指定難病であること。
  2. 医療上、特に必要性が高いこと。
  3. 開発の可能性が高いこと。

やくごろうPick Up

やくごろう

エンレストは今回ようやっと承認が了承されました。

・前治療歴(必ず標準治療への上乗せ)
・製薬企業の情報提供内容
に注目です

日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン改定

2021年3月21に日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン:「2021年JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版急性・慢性心不全診療」が改訂になっています。

今回の改定では、慢性心不全患者に対する新薬が追記されました。

  1. コララン:HCNチャネル遮断薬
  2. エンレスト:アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)
  3. フォシーガSGLT2阻害薬

心不全治療の基本方針
(本文より抜粋。原文は下記リンクへ)

  • HFrEF治療は予後改善が示されているACE阻害薬/ARB+β遮断薬を初回診断時から、忍容性がある限り最大限用いる。これらにMRAを追加した薬物療法を基本治療薬とする。
  • 効果が不十分な場合にはACE阻害薬/ARBをARNIへ切り替える。また,ACE阻害薬/ARBではなく、ARNIの初期導入も考慮する。
  • 糖尿病の有無にかかわらず、心不全悪化もしくは心血管死の複合イベント抑制を期待してSGLT2阻害薬の導入も考慮するが、SGLT2阻害薬の心不全治療における位置づけは更なる検証が必要である。併用薬として、心不全患者の多くで症状の改善には利尿薬が必要であるが、生命予後を改善するという明らかなエビデンスはなく、臓器うっ血に応じて用量を調整することが重要である。
  • 基本治療薬による治療を行っても症候性で、洞調律かつ75拍/分以上の心拍数の場合、イバブラジンの導入を考慮する

コララン:HCNチャネル遮断薬

  • 最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬、ACE阻害薬/ARBおよび MRA)にもかかわらず症候性で、洞調律かつ心拍数≧75拍/分の HFrEF(LVEF≦ 35%)患者において、心不全入院および心血管死のリスク低減に考慮する(推奨クラスⅡa)

エンレスト:アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)

  • ACE阻害薬/ARB、β遮断薬、MRAがすでに投与されているHFrEFにおいて、症状を有する(または効果が不十分)場合、ACE 阻害薬/ARBからの切替えを行う。(推奨クラスⅠa)
  • ACE 阻害薬/ARB未使用の入院中のHFrEFへの投与を考慮する。(推奨クラスⅡa、日本では保険適応外)
  • 左室駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)に対する投与を考慮してもよい。(推奨クラⅢa)

フォシーガ:SGLT2阻害薬

  • 最適な薬物治療(最大量あるいは最大忍容量のβ遮断薬、ACE 阻害薬/ARBおよび MRA)が導入されているにも関わらず症候性で、収縮能の低下した(LVEF≦ 40%)慢性心不全患者に対し、心不全悪化および心血管死のリスク低減を考慮してフォシーガ(ダパグリフロジン)またはジャディアンス(エンパグリフロジン;適応申請中)を投与する。(推奨クラスⅠa)

過去の新薬まとめ記事や、病院薬剤師が年収を上げるための「スキルアップ」の力はこちら

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>>>新薬やニュースを勉強するざっくりまとめ

このサイトでは、病院薬剤師が年収をあと150万円上げる3つの力について解説しています!
3つの力のうち、本当に知っておいてほしい「スキルアップ」の力について現役病院薬剤師やくごろうがまとめています。

主な参考情報

厚生労働省;薬事・食品衛生審議会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/indexshingi.html

ミクスオンライン(簡単に無料で見れるニュース)
https://www.mixonline.jp/

日刊薬事(薬事・食品衛生審議会の議題は無料)
https://nk.jiho.jp/

日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン
「2021年JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版急性・慢性心不全診療」