新薬やニュースざっくりまとめ

新薬勉強ざっくりまとめ2021年5月26日



こんな方へ
  • 新薬がどんどん出てきて、毎回把握しきれない!
  • 新薬のどの情報が重要かわからない!
  • 今後その新薬を扱うかわからないし、まず要点だけ知りたい!

毎日激務の薬剤師は、新薬の情報をタイムリーに把握することはほとんど無理ですよね。私は病院薬剤師として大規模総合病院で勤務していますが、今後扱うのかもわからない全ての新薬を調べる時間がないので、ざっくり特徴だけ把握することにしました。

そこで、この記事では新薬の特徴と要点をざっくり簡単に現役病院薬剤師やくごろうが解説します。

この記事を読めば、これから世の中に出てくる新薬を時間をかけずに勉強でき、いざ必要になったときに調べることがとても楽になります。

毎日激務で、新薬について簡単に把握したい薬剤師の方におすすめです!

2021年5月26日、厚生労働省 薬事・食品衛生審議会第一部会が開催され、新薬の承認可否が審議されました。

※ざっくりまとめ用ですので、正式な名称や用法用量は参考資料などから確認お願いします。

※正式承認は未ですので、ご注意ください。

エブリスディドライシロップ

脊髄性筋萎縮症(SMA)初の経口薬

成分名:リスジプラム
メーカー:中外製薬
申請適応:脊髄性筋萎縮症

脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬として初の経口薬として承認申請。

その他の治療薬として

  • 髄腔内投与するスピンラザ髄注(ヌシネルセンナトリウム)
  • 再生医療等製品であり静注のゾルゲンスマ点滴静注(オナセムノゲン アベパルボベク)

などがある。

脊髄性筋萎縮症(SMA)患者で欠乏している機能性 SMN タンパクを増加させる。

ウパシタ静注透析用シリンジ

透析中に使用する副甲状腺ホルモン(PTH)分泌抑制薬

成分名:ウパシカルセトナトリウム水和物
メーカー:三和化学研究所
申請適応:血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症

透析中に使用する副甲状腺ホルモン(PTH)分泌抑制薬として、パーサヒブに次いで承認申請。

内服ではレグパラやオルケディアがある。

慢性腎臓病(CKD)病態下で起こる二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)に対して使用するCa感知受容体(CaSR)作動薬。

レベスティブ皮下注

短腸症候群に対する初の治療薬

成分名:テデュグルチド
メーカー:武田薬品工業
申請適応:短腸症候群

“短腸症候群(SBS)”は小腸の外科的切除やクローン病、先天性の要因などにより、小腸が短くなり栄養吸収低下→栄養欠乏状態になる疾患。小腸から栄養が吸収されにくく、中心静脈栄養(TPN)の相対適応となる。

残存小腸の機能向上を目的とするテデュグルチド(ヒトグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)の遺伝子組換えアナログ)の注射剤。

GLP-2は腸粘膜増殖・消化吸収の促進・粘膜バリアの維持など多彩な作用で腸管機能の恒常性に寄与する。

臨床試験のエンドポイントは静脈栄養依存の改善。

2012年に米国で承認されて以降、海外では使用されています。2014年4月に日本外科学会から開発要望が提出されていました(第19回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議)。

ツイミーグ錠

2型糖尿病に対するファースト・イン・クラス

成分名:イメグリミン塩酸塩
メーカー:大日本住友製薬
申請適応:2型糖尿病

2型糖尿病に対する新規作用機序の薬剤。

イメグリミンはミトコンドリアの機能を改善することで2型糖尿病の主な成因であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両方を改善することが期待される。

海外に先駆けて日本で承認。

単剤療法および既存の経口血糖降下剤またはインスリン製剤との併用療法のいずれも臨床試験済みです。

Poxel社プレスリリースTIMES2試験

やくごろう

GLP-1作動薬と併用で効果が低い理由は不明だそうです。

メトホルミンと構造がよく似ています。

ギブラーリ皮下注

急性肝性ポルフィリン症に対して承認申請

成分名:ギボシランナトリウム
メーカー:Alnylam Japan
申請適応:急性肝性ポルフィリン症

ポルフィリン症は希少疾患であり、日本では2006~2010年で14例が新規に診断。

5’-アミノレブリン酸合成酵素 1(ALAS1)を標的とする低分子干渉リボ核酸(siRNA)を有効成分とする注射剤。

アジョビ皮下注

片頭痛予防に使用する抗体薬①

成分名:フレマネズマブ
メーカー:大塚製薬
申請適応:片頭痛発作の発症抑制

片頭痛の予防に使用される抗体薬として、エムガルティ(ガルカネズマブ)に次ぐ申請。

抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)モノクローナル抗体。

カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は片頭痛発作時に三叉神経節ニューロン及び硬膜を含む三叉神経の末梢で高度に発現する神経ペプチドであり、血中CGRP濃度の増加に伴って、片頭痛及び群発頭痛といった疼痛症候群が生じる。

アイモビーグ皮下注

片頭痛予防に使用する抗体薬②

成分名:エレヌマブ
メーカー:アムジェン
申請適応:片頭痛発作の発症抑制

片頭痛の予防に使用される抗体薬として、エムガルティ(ガルカネズマブ)に次ぐ申請。

抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体モノクローナル抗体。

小児に係る開発のために再審査期間8年→10年に延長。

やくごろう

片頭痛の薬物療法は下記で解説します。

報告品目:ゼオマイン筋注用

上肢痙縮に加えて下肢も適応追加申請

成分名:インコボツリヌストキシンA
メーカー:帝人ファーマ
申請適応:下肢痙縮

もともと上肢痙縮の適応に加えて下肢も適応追加申請。

下肢痙縮の適応はメキシコとキューバで四肢を限定しない痙縮を適応としているのみ。

報告品目:セルセプト(ミコフェノール酸モフェチル)

造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制で適応追加申請

成分名:ミコフェノール酸モフェチル
メーカー:各社
申請適応:造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制

日本造血・免疫細胞療法学会から開発要望が提出され、公知申請の対象となっていた。

やくごろうPick Up:片頭痛の薬物療法

抗CGRP抗体の登場により、片頭痛の薬物療法が転換期を迎えています。

片頭痛の薬物療法についてざっくりおさらいしたいと思います。

※ざっくりおさらいするので、正確な情報は各添付文書、ガイドラインを参照ください。

日本の片頭痛治療に関するガイドラインは、日本頭痛学会の慢性頭痛の診療ガイドライン2013があります。

やくごろう

抗CGRP抗体の登場を受けて、現在改定中のようです

片頭痛の薬物療法は下記の二つに分かれます。

  1. 急性期治療
  2. 予防療法

片頭痛の薬物療法:急性期治療

急性期治療は、重症度に応じた層別治療が推奨されています。

  • 軽度~中等度
    • アセトアミノフェン
    • NSAIDs
  • 中等度~重度または上記無効例
    • トリプタン
日本頭痛学会;慢性頭痛の診療ガイドライン2013

【アセトアミノフェン、NSAIDs】

アセトアミノフェンおよびNSAIDs単剤は安全性が高く安価であり、軽度~中等度の片頭痛発作の第一選択薬として推奨されています。

しかし、トリプタンに比べ効果は限定的で、アセトアミノフェンやNSAIDsで効果のない片頭痛患者にはトリプタンの早期投与を検討することとなっています。

【発作治療としてはトリプタン】

トリプタン服用のタイミングは、頭痛が軽度か、もしくは頭痛発作早期(発症より1時間ぐらいまで)が効果的とされています。

片頭痛前兆期・予兆期にトリプタンを使用しても支障はないが、無効である可能性があるとされています。

複数のトリプタンをどう使い分けるか?

「個々のトリプタンの特性についてはわずかながらの差異であり、十分なエビデンスはない」とガイドラインに明記されています。

剤形の違いで選択する必要があり、非経口トリプタンは片頭痛重責発作に有効であるとされています。

日本頭痛学会;慢性頭痛の診療ガイドライン2013

片頭痛の薬物療法:予防療法

片頭痛発作が月に2回以上あるいは6日以上ある患者では、予防療法の実施について検討することが推奨されています。

  • 急性期療法のみでは片頭痛発作による日常生活の支障がある場合
  • 急性期治療薬が使用できない場合
  • 永続的な神経障害をきたすおそれのある特殊な片頭痛予防療法を行うよう勧められる。

上記の場合は、予防療法を行うよう推奨されています。

日本頭痛学会;慢性頭痛の診療ガイドライン2013

複数の予防療法をどのように使い分けるか?

エビデンスをもとに有害事象が少ない薬剤を低用量から開始する。

有害事象がない限り十分な用量までゆっくり増量し、2~3カ月程度の期間をかけて効果を判定する。増量後も効果が得られなければ他剤へ変更。

予防療法の効果判定には少なくとも2カ月を要する。3~6カ月は予防療法を継続し、コントロールが良好になれば漸減し可能であれば中止。

やくごろう

ロリメジン、プロプラノロール、バルプロ酸というイメージですね。

若い女性の有病率も高いので、妊娠と薬物療法についても注意する必要があります。

抗CGRP抗体が登場

2021年1月22日、片頭痛発作治療薬ガルカネズマブ(商品名エムガルティ皮下注)が承認されました。

片頭痛発作時に発現が認められる 「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)」 に特異的に結合する、ヒト化抗 CGRP モノクローナル抗体です。

用法:4週に1回120mgを皮下注(初回のみ240mg)
薬価:4万5165円/120mg1キット

【国内第II相試験(CGAN試験)】

ベースラインの片頭痛日数が月4日以上の日本人反復性片頭痛患者459例を対象とし、1カ月あたりの片頭痛日数(MHD)のベースラインからの変化量が比較されています。

  • ベースライン1カ月あたりの片頭痛日数(MHD)
    • ガルカネズマブ群8.6±2.8回 vs プラセボ群 8.6±3.0回
  • MHDのベースラインからの変化量
    • ガルカネズマブ群-3.6±0.3回 vs プラセボ群 -0.6±0.2回

【国際共同第III相試験(CGAW試験)】

他剤で効果不十分の反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者462例を対象とした試験でも有効性が確認されています。

  • ベースライン1カ月あたりの片頭痛日数(MHD)
    • ガルカネズマブ群13.4±6.1回 vs プラセボ群12.9±5.7回
  • MHDのベースラインからの変化量
    • ガルカネズマブ群-4.1±0.3回 vs プラセボ群-1.0±0.3回

片頭痛治療における抗CGRP抗体の位置づけ

頭痛診療ガイドラインの改訂作業を進めており、改定版には CGRP 関連新規片頭痛治療薬についても掲載予定のようですが、喫緊の対応としてCGRP 関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)が公表されています。

また、厚生労働省からはガルカネズマブ(遺伝子組換え)の最適使用推進ガイドラインも公表されています。

CGRP 関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(抜粋)では、

  • 18歳以上の片頭痛患者
  • 3カ月以上の片頭痛日数が1ヵ月に平均4日以上
  • 日常生活の指導や急性期治療薬の服用を適切に行っても日常生活に支障をきたし,保険適用のある既存の片頭痛予防薬(プロプラノロール塩酸塩,バルプロ酸ナトリウム,ロメリジン塩酸塩等)が忍容性や副作用から使用の継続ができない

上記に該当する片頭痛患者への投与が推奨されています。

また、投与開始にあたり,医師要件,1ヵ月あたりの片頭痛日数,投与前の治療要件,投与開始3ヵ月終了時点の評価を診療報酬明細書に記載する必要があります。

※医師の要件

治療の責任者として配置されている医師について、下記を満たす

  • 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に,頭痛を呈する疾患の診療に5年以上の臨床経験
  • 日本神経学会、日本頭痛学会、日本内科学会(総合内科専門医)、日本脳神経外科学会いずれかの学会の専門医の認定を有していること

※欧州頭痛連合のコンセンサスでは,エキスパートオピニオンとして,CGRP関連製剤導入時に服用している片頭痛予防薬について,反復性片頭痛の場合は中止,慢性片頭痛の場合は,CGRP 関連製剤の効果がみられてからの中止を勧めている。

やくごろう

CGRP 関連新規片頭痛治療薬同士の使い分けが今後明らかになることを期待しています。

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主な参考情報

厚生労働省;薬事・食品衛生審議会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/indexshingi.html

ミクスオンライン(簡単に無料で見れるニュース)
https://www.mixonline.jp/

日刊薬事(薬事・食品衛生審議会の議題は無料)
https://nk.jiho.jp/

日本頭痛学;の慢性頭痛の診療ガイドライン2013

日本頭痛学会;片頭痛のガルカネズマブ療法ガイドライン(暫定版)

厚生労働省:ガルカネズマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(片頭痛発作の発症抑制)について