こんな方へ
- 新薬がどんどん出てきて、毎回把握しきれない!
- 新薬のどの情報が重要かわからない!
- 今後その新薬を扱うかわからないし、まず要点だけ知りたい!
毎日激務の薬剤師は、新薬の情報をタイムリーに把握することはほとんど無理ですよね。私は病院薬剤師として大規模総合病院で勤務していますが、今後扱うのかもわからない全ての新薬を調べる時間がないので、ざっくり特徴だけ把握することにしました。
そこで、この記事では新薬の特徴と要点をざっくり簡単に現役病院薬剤師やくごろうが解説します。
この記事を読めば、これから世の中に出てくる新薬について時間をかけずに勉強でき、いざ必要になったときに調べることがとても楽になります。
毎日激務で、新薬について簡単に把握したい薬剤師の方におすすめです!
2021年7月30日、厚生労働省 薬事・食品衛生審議会第二部会が開催され、新薬の承認可否が審議されました。
※ざっくりまとめ用ですので、正式な名称や用法用量は参考資料などから確認お願いします。
※正式承認は未ですので、ご注意ください。
<新薬勉強ざっくりまとめ:審査品目>
ステルイズ水性懸濁筋注シリンジ
梅毒治療の持続型筋注製剤
成分名:ベンジルペニシリンベンザチン水和物
メーカー:ファイザー
申請適応:梅毒(神経梅毒を除く)
- 早期梅毒には単回投与
- 後期梅毒には週1回×3回投与
日本感染症教育研究会から開発要望が提出され、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議の評価を経て、開発要請がなされた製品。
バイシリンG顆粒では長期服用のアドヒアランス不良例が多く、期待されていた製品ですね。
リンヴォック錠
12歳以上の小児アトピー性皮膚炎に使える経口JAK阻害薬
成分名:ウパダシチニブ水和物
メーカー:ファイザー
申請適応:アトピー性皮膚炎
関節リウマチ、関節症性乾癬に次ぐ適応追加申請。
アトピー性皮膚炎に対する経口JAK阻害薬としてはオルミエント錠(バリシチニブ)に次ぐ2番目。
オルミエント錠(バリシチニブ)は成人のみの適応。
コセンティクス皮下注
乾癬の小児適応追加申請
成分名:セクキヌマブ
メーカー:ノバルティスファーマ
申請適応:尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬
- 尋常性乾癬「PsO」
- 関節症性乾癬「PsA」
- 膿疱性乾癬「GPP」
に対して、小児適応の申請。
レットヴィモカプセル
非小細胞肺癌の新しい分子標的薬
成分名:セルペルカチニブ
メーカー:日本イーライリリー
申請適応:RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
RET融合遺伝子陽性患者は NSCLC 患者の3.2%(Clin Cancer Res 2017;23:1988-97)。
米国では2020年5月に承認済み。
<報告品目>
キイトルーダ点滴静注
MSI-Highを有する結腸・直腸癌1次治療
PD-L1陽性トリプルネガティブ乳がんに適応追加
成分名:ペムブロリズマブ
メーカー:MSD
申請適応:MSI-Highを有する結腸・直腸癌、PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
MSI-Highを有する結腸・直腸癌
今までは「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」とされ、2次治療以降の適応であった。
今回、大腸癌については一次治療からの承認申請。
結腸・直腸癌患者のうち、MSI-Highを有する患者の割合は5.9%(Anticancer Res 2017;37:239-47)。
PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
いわゆるトリプルネガティブ乳がんのPD-L1陽性例に対し、
- ・キイトルーダ+ゲムシタビン+カルボプラチン
- ・キイトルーダ+アブラキサン
- ・キイトルーダ+パクリタキセル
いずれかのレジメンで適応追加申請。
乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬としては、
テセントリク(アテゾリズマブ)+nabパクリタキセルに次ぐ2剤目。
トリプルネガティブ乳がんの免疫チェックポイント阻害薬については、下記のやくごろうpick upで詳しく解説します。
オプジーボ点滴静注、カボメティクス錠
根治切除不能又は転移性の腎細胞がん1次治療として併用療法で適応追加
成分名:ニボルマブ、カボザンチニブ
メーカー:小野薬品工業、武田薬品工業
申請適応:根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
根治切除不能又は転移性の腎細胞がん1次治療に対して、2剤併用療法で適応追加
今までの腎細胞癌適応
- オプジーボ:単剤で2次治療以降
- オプジーボ+ヤーボイ:1次治療
- カボメティクス:単剤で1次治療
今回、オプジーボ+カボメティクス併用で1次治療の適応申請です。
【進行腎癌一次治療】について
参考:『腎癌診療ガイドライン 2017 年版』2019 年アップデート
淡明細胞型腎細胞癌 (低リスク) | ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用 アベルマブ+アキシチニブ併用 スニチニブ パゾパニブ |
淡明細胞型腎細胞癌 (中リスク) | イピリムマブ+ニボルマブ併用 ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用 アベルマブ+アキシチニブ併用 カボザンチニブ スニチニブ パゾパニブ |
淡明細胞型腎細胞癌 (高リスク) | イピリムマブ+ニボルマブ併用 ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用 アベルマブ+アキシチニブ併用 カボザンチニブ |
非淡明細胞癌 | スニチニブ テムシロリムス |
オプジーボ+カボメティクス併用のCheckMate -9ER試験では、淡明細胞型腎細胞癌の低~高リスクまで含まれていました。
(低リスク:22%、中リスク:58%、高リスク:20%)
ブリストルマイヤーズプレスリリース
ブスルフェクス点滴静注
小児の1日1回用法追加申請
成分名:ブスルファン
メーカー:大塚製薬
申請適応:同種造血幹細胞移植の前治療、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍及び神経芽細胞腫における自家造血幹細胞移植の前治療
- 今までの小児用法(C法):6時間毎に1日4回
- 新たな小児用法(D法): 1日1回
成人では1日4回用法と1回用法があったが、小児は1日4回用法のみであった。
今回、小児でも1日1回の用法追加。
やくごろうPick Up新薬
トリプルネガティブ乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬
今回、 トリプルネガティブ乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬としてキイトルーダ(ペンブロリズマブ)の承認了承がされました。
トリプルネガティブ乳がんに対しては、テセントリク(アテゾリズマブ)がすでに承認されているので、この2剤を比較します。
参考:乳がん診療ガイドライン(日本乳がん学会)2021年3月31日改訂
CQ30.転移・再発乳癌に対してPD-1/PD-L1阻害薬は勧められるか?
→PD-L1陽性のトリプルネガティブ乳癌の転移・再発一次治療として、化学療法(アルブミン懸濁型パクリタキセル)にアテゾリズマブを併用することを弱く推奨する。
テセントリク(アテゾリズマブ)はガイドラインにもすでに載っていますね。
テセントリク(アテゾリズマブ)
国際共同第III相臨床試験(IMpassion130試験)/中外製薬Webサイト
OSについては計3回の解析(中間解析2回、最終解析1回)が実施される予定であり、現在最終解析待ちです。
第2回中間解析では、IC>1(1%以上)例のITT集団において、
テセントリク+nab-PTX群のプラセボ+nab-PTX群に対する優越性は検証されませんでした。
※アテゾリズマブではPD-L1発現をSP142抗体を用いて測定
IC1以上は40%で、ほぼすべてがCPS1以上の部分に含まれ、さらにCPS10以上と重なる30%の患者では、どちらの薬剤も使える可能性
テセントリク(アテゾリズマブ)はOSは結果待ちですね
キイトルーダ(ペンブロリズマブ)
第III相KEYNOTE-355試験/ MSDプレスリリース2021/8/4
米国本社KEYTRUDA®の第3相KEYNOTE-355試験が PD-L1陽性(CPS≧10)の転移性トリプルネガティブ乳がん患者において全生存期間の主要評価項目を達成
KEYTRUDA®と化学療法との併用療法が初めて転移性トリプルネガティブ乳がん患者の全生存期間を統計学的に有意に改善
※キイトルーダ(ペンブロリズマブ)ではPD-L1発現を22C3抗体を用いて測定
CPS 1未満はTNBC全体の20%、1以上10未満は40%、10以上は40%となり、KEYNOTE-355試験で主要評価項目が達成されたのは40%
キイトルーダ(ペンブロリズマブ)はOS延長効果が出ました。
過去の新薬まとめ記事や、病院薬剤師が年収を上げるための「スキルアップ」の力はこちら
過去の新薬まとめ記事はこちらでまとめています。
このサイトでは、病院薬剤師が年収をあと150万円上げる3つの力について解説しています!
3つの力のうち、本当に知っておいてほしい「スキルアップ」の力について現役病院薬剤師やくごろうがまとめています。
主な参考情報
厚生労働省;薬事・食品衛生審議会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/indexshingi.html
ミクスオンライン(簡単に無料で見れるニュース)
https://www.mixonline.jp/
日刊薬事(薬事・食品衛生審議会の議題は無料)
https://nk.jiho.jp/