- 病院薬剤師はやりがいがある
でも、給料が低くて残業多い - 調剤薬局は給料が高い
でも、短調でやりがいない - やりがいと給料が両立できる働き方はあるの?
やりがいと給料のどちらをとるかで、
病院 or 調剤薬局を悩む薬剤師は多いです。
実際、多くの病院と調剤薬局では、やりがいと給料が両立しません。
しかし、病院薬剤師の仕事を調剤薬局の給料で行う「日本調剤の病院派遣」という制度をご存じですか?
この記事では、日本調剤の病院派遣を約3年間(約10人)受け入れた病院薬剤師の視点で「日本調剤の病院派遣」について解説します。
この記事を読めば、日本調剤の病院派遣の客観的な仕事内容と実態がわかり、日本調剤病院派遣の情報を得る方法もわかります。
あくまでたった一つの受け入れ病院の、たった一人の感想ですが、参考になれば幸いです。
日本調剤の病院派遣「社外ジョブチャレンジ制度」とは
調剤薬局の薬剤師を病院に派遣する制度として、日本調剤の「社外ジョブチャレンジ制度」があります。
「社外ジョブチャレンジ制度」とは…
日本調剤(派遣元)と派遣先との間で労働者派遣基本契約(派遣パートナー契約)を締結することで、産休・育休取得により薬剤師が不足する際、計画的に派遣薬剤師の供給を受けられる、というサービスです。
引用:日本調剤「病院向け薬剤師派遣事業」より
つまり、
- 日本調剤の正社員として在籍し
- 病院に派遣されて働く
という雇用形態になります。
通常の”派遣”は、「一定期間のみ派遣先(病院)と雇用契約」が普通ですね。
このため、
- 雇用形態:〇日本調剤の正社員(×派遣社員)
- 給料や福利厚生:日本調剤
- 業務内容:病院薬剤師
- 派遣終了後:日本調剤で働く
になります。
日本調剤の社外ジョブチャレンジ制度は、「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」であるため、病院の薬剤師が産休・育休で一時的に欠員が出た時のみ派遣されることになります。
薬剤師の病院派遣は法律違反?
実は、病院に薬剤師を派遣することは「労働者派遣法第4条」で規制されています。
病院等が派遣労働者を受け入れると、病院がチーム医療の構成員を特定できず、また、チーム医療の構成員に派遣元事業主の都合によって差し替えられる者が含まれることとなり、チーム医療の構成員によるお互いの能力把握や意思疎通が十分になされず、チーム医療に支障が生じ、また、患者に提供される医療に支障が生じかねないおそれがあることから、一律に労働者派遣法の労働者派遣事業の対象とすることは適当ではない。
厚生労働省:労働者派遣制度の現状等に関する資料より
過去に行政指導を受けた大病院もありました。
しかし、この規制には下記の例外が定められています。
- 紹介予定派遣(試験雇用など)
- 病院・診療所等以外の施設(社会福祉施設等)で行われる業務
- 産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務
- 就業の場所がへき地・離島の病院など都道府県が必要と認めた病院等
上記の根拠により規制③に該当するため、日本調剤の社外ジョブチャレンジ制度が「産休・育休代替薬剤師派遣サービス」に限定されています。
病院は規制されていますが、調剤薬局への派遣は規制外です。
一方で、反対意見もあるようです。
>>>薬事日報「日病薬・川上副会長、薬剤師派遣「容認できない」‐病院等での「調剤」は禁止対象」
https://www.yakuji.co.jp/entry68524.html
賛否両論ある「病院への薬剤師派遣業務」ですが、日本調剤は2018年4月に労働者派遣事業許可(派13-309861)を取得済みです。
日本調剤の病院派遣:病院側のメリット
日本調剤の病院派遣について、病院側のメリットを紹介します。
産休育休による人員不足の解消
病院が病院派遣に頼る最大のメリットです。
ほとんどの病院は薬剤師数の定員が決まっているため、産休育休による人員不足のために薬剤師を新たに採用できません。
もし採用するのであれば、
- 即戦力の中途薬剤師を
- 臨時職員として安い給料で
- 1年~2年の短い期間だけ
という悪い条件で募集をかけるしかありません。
このため、どんなに勉強になる病院でも、応募はほとんどないです。
あなただったら応募しますか?
仮に応募があったとしても、面接して、前職の退職時期と採用時期を決めて…などしていると数カ月はかかります。
一方、病院派遣は採用コストがかかるものの、即戦力の薬剤師を希望の期間ぴったりで欠員補充できます。
日本調剤の病院派遣:日本調剤側のメリット
日本調剤側のメリットは、
- 派遣することで病院から報酬を得る
- 自社社員に病院の経験を積ませる
- 病院とのコネクションを作る
など、多数メリットがあります。
お互いにwin-winですね。
日本調剤病院派遣の仕事内容
日本調剤病院派遣の仕事内容は、派遣先の病院によって規定されます。
ほんの一例ですが、私の病院で日本調剤病院派遣の方にお願いしていた業務を紹介します。
仕事内容①内服調剤
業務の比率No.1です。
調剤薬局の経験があるので、研修に時間を割かずに業務をお願いできます。
「調剤以外のことをしたいから病院薬剤師になった」という病院薬剤師も多く、調剤業務は人気がなく苦手な薬剤師が多いですね…。
調剤室を難なく回して下さる病院派遣さんにいつも助けられています。
仕事内容②注射調剤
注射調剤も、調剤の一環としてお願いしています。
病院未経験の方は始めこそ慣れないかもしれませんが、新卒の薬剤師よりも圧倒的に早く一人前になります。
内服調剤に次いで病院業務の多くを占めるので、お願いしている病院は多いのではないでしょうか。
仕事内容③抗がん剤/TPN調製
調剤薬局では経験しないようですが、ほとんどの方がOSCEを経験しているためシリンジの使い方などはすぐに慣れます。
最近では、診療報酬のために病院薬剤師が抗がん剤の指導に出ることが多くなり、逆に抗がん剤を調製する人員が不足しています。
締め時間も決まっているので、調製は時間通りで終わることが多くお願いしやすい業務です。
万が一があってはいけないので、処方監査は病院薬剤師と一緒に行います。
よく「勉強になる」と言ってもらえることが多い業務です。
TPN調製は、抗がん剤調製ができれば問題なくできるので一緒にお願いしています。
仕事内容④外来持参薬確認
入院時支援加算の新設により、外来で持参薬を確認する病院が増えています。
「薬剤師のマンパワーが足りなくてできない」という病院も多いです。
持参薬を確認→電子カルテに登録する業務なので、特別なスキルなしで可能です。
用法やアレルギーの聴取など、患者対応は薬局経験者の方は慣れているのでとても活躍されています。
日本調剤の病院派遣を受け入れる病院側の感想
私は日本調剤の病院派遣ではありませんが、受け入れる病院側として率直な感想を紹介します。
病院側は日本調剤の病院派遣でとても助かる
- 産休育休の欠員を補充したい病院
- 病院に薬剤師を送りたい日本調剤
この2者の需要と供給がマッチしていると思います。
薬剤師の病院派遣には賛否両論あるようですが、労働者派遣事業許可を得ているのは事実です。なにより、私の病院ではとても活躍されています。
受け入れる前は、「調剤薬局の薬剤師が本当に病院で仕事なんかできるのか…?」と全然期待されていませんでしたが、今ではそんな声は全く聞きません。
特に調剤業務は病院薬剤師が苦手であることが多く、診療報酬改定もあり患者指導などの仕事が増えたということもあり大活躍されています。
かなり主観的な感想ですが、コミュニケーションも過不足なく、黙々と仕事をする方が多いです。
日本調剤病院派遣がうらやましい3つのこと
うらやましい①委員会など雑務なし
病院薬剤師が激務と言われる理由は、ルーチン業務よりも委員会など雑務です。
短期間の契約となる病院派遣薬剤師には、院内の対人関係が重要となる委員会業務を依頼することはほとんどないです。
このため、締め時間が決まっているルーチン業務のみとなるので”病院薬剤師は激務”のイメージとは異なります。
うらやましい②残業、当直なし
契約上、病院側は残業が発生しないように注意しています。
ただでさえ高価な派遣費用に残業が発生した場合、
「残業代も高額になる+手続きが面倒」
が理由です。
定時になったら、あとは病院薬剤師に任せて上がってもらいます。
同じ理由で当直や休日当番もないので、体調の変化も少ないです。
うらやましい③調剤薬局の給料
病院薬剤師の給料は、やはり調剤薬局の給料には敵いません。
病院派遣薬剤師の方には具体的な金額は聞けませんが、転職サイトから得た情報では「病院で残業+当直代たっぷりもらったくらい」の印象でした。
残業・当直なしなら、かなりいいです。
日本調剤病院派遣が大変そうな2つのこと
大変そうな①残業代、当直代がない
薬剤師の給料を大きく左右する残業代と当直代がないので、「頑張った分だけ稼げる」というわけではないです。
「給料はいつも通り」ですね。
大変そうな②職場がコロコロ変わる
短い期間で派遣先の病院がコロコロ変わるようです。
病院と日本調剤の契約で期間が決まるので、派遣薬剤師の希望が反映されるとは考えにくいです。
私も勧められた日本調剤病院派遣への求人情報
私が「自分の市場価値を診断」したときに、
転職サイトの転職エージェントから「残業を減らすなら日本調剤の病院派遣薬剤師」を提案されました。
当時の求人情報では、
- 診療報酬に係る認定(がん、緩和、NSTなど)があると給料4~5万円ほどアップ
- 年齢と転職回数に制限あり
- 最近応募が多く、狭き門になりつつある
らしいです。
当時と状況が変わっている可能性があるためご注意下さい。
日本調剤病院派遣の求人情報を詳しく知る2つの方法
日本調剤病院派遣が気になる薬剤師に向けて、詳しい求人情報を得る2つの方法を紹介します。
日本調剤病院派遣の情報①日本調剤に直接問い合わせ
直接問い合わせすることで、最も正確な情報が得られます。
問い合わせ歴が残り、いざ応募したときに影響する可能性があるので注意しましょう。
日本調剤病院派遣の情報②薬剤師転職サイト
私のおすすめは、転職サイト経由で情報を得ることです。
- 聞きにくいことも遠慮なく聞ける
- 客観的な情報が手に入る
- いざ応募するときにはサポートあり(無料)
- 違うと思ったら転職しなければいい
上記のような多くのメリットがあり、利用しないのはもったいないと思います。
私が登録した薬剤師転職サイト大手3社はいずれも取り扱いがあるとのことでした。
薬剤師転職サイト大手3社ならどこでも大丈夫だと思います。
(ちなみに、ファルマスタッフとは同じ日本調剤グループの企業です)
転職サイト大手3社で自分の市場価値を診断したときの体験はこちらの記事で詳しくまとめています。
>>>【リスクなし】薬剤師が自分の市場価値を診断するたった1つの方法
初回登録時のフリーコメントに「日本調剤の病院派遣薬剤師について知りたい」と書けばOKです。
まとめ:日本調剤の病院派遣でやりがいと給料を両立
今回、一つの病院の一人の薬剤師が感じたことを解説しました。
世間的には、病院に薬剤師を派遣することには賛否両論があるようですが…
病院の需要と日本調剤の供給がマッチし、win-winであることは間違いないです。
- 調剤薬局の給料で
- 病院薬剤師の仕事を
- 残業ほとんどなし
こんな条件を探していた方は、薬剤師転職サイトで最新情報が簡単に手に入るので、是非注目してみてください。
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