- 病院から病院へ転職を考えている
- 転職する際にやるべきことを整理したい
- 転職で失敗したくない
薬剤師は転職が盛んな業界であり、病院から病院へ転職する方もめずらしくありません。しかし、いざ転職するとなると何をするべきか悩むケースは多いです。
私は新卒で就職した病院で3年間勤務した後、病院から病院に転職しました。実際に転職をするときには何をするべきかわからず、後になって「あれをやっておけばよかった」と思うことがあります。
そこでこの記事では、薬剤師が病院から病院へ転職する前後に「必ず」やるべきことについて、実際に転職した経験をともに解説します。
この記事を読めば、病院から病院に転職する際に失敗しないための
- 転職「前」にやるべきこと
- 転職「する時」にやるべきこと
- 転職「後」にやるべきこと
が全てわかります。
転職で失敗しないよう、病院から病院へ転職を考えている薬剤師にぜひ読んでほしい内容です。
病院から病院へ転職「前」にやるべきこと
転職は事前の準備が重要です。病院から病院へ転職「前」にやるべきこと3つを解説します。
- 転職の理由を確認
- 転職する時期を確認
- 自分のスキルアップ
病院から病院へ転職「前」:①転職の理由を確認
病院から病院へ転職するには、何かしら理由があると思います。
- スキルアップがしたい
- 人間関係が悪い
- 残業や夜勤がつらい
- 家族の転勤の都合
これらがよくある理由だと思います。
転職先を探す際には、この転職する理由がもっとも重要になります。
この理由をクリアできる転職先を探す必要があります。
また、ここの理由が曖昧になってしまうと転職しても条件が合わずに「転職しなければよかった」ということにもなりかねません。
スキルアップをしたい場合は
- 実際にどんなスキルが欲しいのか
- 症例がいるのか
- 認定や専門を取れるのか
が重要になります。
人間関係が理由であれば、前の職場と接点のない職場を探した方がいい場合があります。病院薬剤師の業界はとても狭く、病院同士で接点があるケースもあります。
転職する理由は新しい職場探しの基礎となるものなので、しっかりと整理するようにしましょう。
病院から病院へ転職「前」:②転職する時期を確認
- すぐにでも転職したいのか
- 3年後くらいに転職したいのか
- いいところがあれば転職したいのか
自分が転職をする時期を決める必要があります。
理由は、転職までに必要なことが整理できるからです。
産休、育休を視野に入れている方は、転職してすぐに休みに入りづらいかもしれません。このため、早めに転職を済ませておく必要もあります。
あくまで私個人の意見ですが、病院から病院に転職を考えているほとんどのケースでは、躊躇せずに転職した方がいいと思います。
その理由は
- 年齢が若いほど転職先が見つかりやすい
- 非正規雇用やレジデントも選択肢にできる可能性がある
- 一度悪くなった人間関係は改善しない
- 転職してすぐに産休育休は気まずい
- 新しい病院でスキルアップする時間が少なくなる
- 前職場と新しい職場の業務は全く違う
転職を待った方がいい数少ないケースは、
- 人間関係が合わない上司などの異動や退職が決まっている
- 医療薬学会専門薬剤師のように、「研修施設に5年勤務」など必要な年数が定められている場合
これらの場合はその年になるまで待ってもいいかもしれません。
私は「石の上にも3年」と思い、3年ぴったりで病院から病院に転職しました。前の職場は認定や専門などの研修施設ではなく、転職先が研修施設だったので、もう少し早く転職しておけば…と思うこともあります。新しい病院では非正規雇用からのスタートでしたが、子供がいるときだったら家族に猛反対されて無理だったとも思います。
業務のやり方も病院によって全然違うので、また一から慣れる必要がありました。「3年待ってもあまりいいことはなかった」というのが正直な感想です。
病院から病院への転職だけではないと思いますが、「前の職場を何年続けたか」ではなく、「転職した回数」が気にされるのだと思います。
転職の回数があまりにも多いと警戒されます。
病院から病院へ転職「前」:③自分のスキルアップ
病院の仕事のやり方は職場でそれぞれですが、薬剤師としての薬の知識はどの職場に行っても同じく必要とされます。
特に病院から病院へ転職するケースでは、調剤・払い出し方法など運用が全然違うため、前職場で覚えた仕事が新しい職場でも使えるのはほんのわずかです。
しかし、疾患の標準的な治療方法はどこの病院でも同じです。あなたが勉強した薬の知識は決して無駄にはなりません。
また、新しい職場の同僚からすると、あなたがどの程度薬の知識を持っているのかわかりません。このため、薬の知識を持っている前提で対応されることが多くなります。
仕事のやり方は教えてくれても、新卒のように薬の知識まで教えてくれることは少ないでしょう。
「こんなことも知らないの?」と思われないよう、病院から病院への転職を考え始めたら、薬の勉強はしっかりするようにしましょう。
私が病院から病院に転職したときも、前の職場のマニュアルはあまり役には立ちませんでしたが、薬の知識は裏切りませんでした
病院から病院へ転職「する時」にやるべきこと
病院から病院へ転職「する時」にやるべきこと3つを解説します。
- 職場選び
- 上司同士のつながりを確認
- 転職時期の調整
病院から病院へ転職「する時」:①職場選び
当然ですが、病院から病院への転職で最も重要なのが職場選びです。
全てが完ぺきな職場はありません。あったとしても離職率が低いはずなので、募集はほとんどしていないでしょう。
このため、転職理由に合った職場を選ぶ必要があります。
病院から病院への転職で職場探しに使うのは
- 都道府県病院薬剤師会の募集ページ
- 各病院のホームページ
- 薬剤師転職サイト
上記のいずれかです。
例外として、公立病院の正規職員は「公務員」として自治体への応募となるため、自治体の情報を参照する必要があります。
病院薬剤師の転職先の探し方・選び方は別の記事で解説しています。
>>>病院薬剤師の効率的な転職先探し方:具体的ツールと4つの手順
転職サイトについては、大規模病院は登録していないところがほとんどです。まれに大学病院などありますが、そのほとんどが院内調剤のみの大病院で調剤要員が欠員しているためだと思います。
中小病院に転職を考えている人は、無料なので登録してみるのも手です。
病院から病院へ転職「する時」:②上司同士のつながりを確認
病院から病院への転職で、特に気を付けなければならないのが「上司同士のつながり」です。
病院薬剤師の業界は思っている以上にとても狭いです。
特に、
- 同じ薬剤師会の病院
- 同じ都道府県かつ同じくらいの規模の病院
上記の場合、かなりの確率で薬剤部長同士が知り合いです。
新しい職場の薬剤部長は「問題ある人は採用したくない」と思っているはずなので、前の職場の上司が知り合いの場合はこっそり聞いてみる可能性が高いです。
また、採用は薬剤部長一人で決めることは少なく、副部長や主任などとも相談するはずです。特に転職の理由が「人間関係」の場合は、今の職場と新しい職場がどのくらいつながりがあるのかよく注意しましょう。
あなたが若手薬剤師の場合は、信頼できる先輩や上司に探りを入れてみるといいかもしれません。
病院から病院へ転職「する時」:③転職時期の調整
病院から病院への転職の場合、新卒と違って採用時期が決まっているケースは少ないです。このため、転職する時期は今の職と新しい職場と調整が必要です。
おおよそのイメージでは、内定をもらってから2~3カ月くらいが多いと思います。
転職する時期を調整するときは
- 今の職場:新しい人員が決まるまで待ってほしい
- 新しい職場:すぐにでも来てほしい
となるパターンが多いです。
あらかじめやっておくべきこと
- 今の職場の就業規則を確認→最低限どのくらい前に退職を伝える必要があるか
- 新しい職場で内定をもらう前に「内定をもらってから〇カ月後から勤務可能」とあらかじめ伝えておく
①就業規則は、多くの職場で2週間~1カ月程度だと思います。しかし、2週間~1カ月では業務の引継ぎや有休消化であまり現実的ではないかもしれません。就業規則をクリアしていれば今の職場は止めることはできませんが、角が立つことにもなるので、2~3カ月くらいを目安にしておくといいかもしれません。このくらいの期間があれば、新しい職場で内定をもらってから退職を伝えても遅くはないと思います。
②新しい職場で内定をもらうまでは、勤務可能な具体的な時期の話になりにくいです。
内定後に「来月から来てください」と言われて対応できなくなる前に、できれば見学の時(面接より前)にあらかじめ話しておくようにしましょう。
面接で「来月から働けますか?」と聞かれて、Noとは言いにくいですよね。
新しい職場からすると、人員が不足していて募集をかけているので、少しでも早く働いてほしいと思っているはずです。しかし、1~2か月くらいの差をどうしても待てない状況もあまりないと思います。応募が数人いたとしても、選考は勤務可能時期ではなく人柄やスキルになるはずです。
「今の職場で引継ぎをしっかりしてから退職したい」という気持ちを伝えれば、新しい職場の上司は「仕事に責任をもってくれそうだ」とむしろ安心してくれるのではないでしょうか。
これは新しい職場に伝える必要はありませんが、可能であればボーナス月までは前の職場だと給料が大きく違います。
病院から病院へ転職「後」にやるべきこと
転職は内定が決まったら終わりではありません。新しい職場で成功するために、また転職回数を増やさないためにやるべきことがあります。
特に最初が肝心なので、病院から病院へ転職「後」にやるべきこと3つを解説します。
- 新しい職場のお作法を習得
- モノの位置を把握
病院から病院へ転職「後」:①新しい職場のお作法を習得
職場のお作法は、職場によって全く違います。
調剤内規の例では、「ヒートの一錠を作らないように」や、「輪ゴムを使うor使わない」など、細かいものも多くあります。
処方監査でも、「酸化マグネシウムとレボフロキサシンやチラーヂンが同時に処方されている場合はどうする」など、病院によって対応が違うはずです。
「前の病院ではこうやってたから」は、基本的には通用しないと思った方がよいでしょう。「もっとこうした方がいい」と思ったことはメモに残しておき、信頼関係がある程度できてから提案した方がいいかもしれません。
病院から病院へ転職「後」:②モノの位置を把握
慣れない職場でまず困るのが「問い合わせへの対応」です。
病院の運用が全く違うため、対応も異なると思います。しかし、病院によって「よくある問い合わせ」については対応と使うモノがある程度決まっていると思います。
- 添付文書や治療薬マニュアルなどの場所
- 腎機能低下時の用量や配合変化などの一覧表
「○○の問い合わせはコレを見る !」はまず初めに確認しておくべきだと思います。
モノの位置とは少し違いますが、病院から病院へ転職の場合は同様の理由で「電子カルテや部門システム(トーショーやユヤマ)の使い方」も重要です。
特に電子カルテは業務に直結するので早めに使いこなせるように心がけましょう。電子カルテや部門システムのメーカーはそれほど多くないので、今の職場はどのメーカーを使っていて、新しい職場はどのメーカーかを確認しておくといいと思います。
見学のときに「今の職場では電子カルテは何を使っていますか?」答えられないとかっこ悪いですね
病院から病院へ転職「後」:③始めはビジネスライクな人間関係を
ここは個人的な考え方になってしまうかもしれませんが…
ここでいう「ビジネスライク」とは、なるべく敵をつくらないということです。
人間関係はどうしても相性があります。そして、合わない人が一人でもいると、仕事がしにくくなります。また、一度悪くなった人間関係はもとに戻すことはほとんどできません。
始めはどの人と相性がいいのか悪いのかわからないので、どんな人でも「仕事」と割り切って接するといいと思います。
もし嫌いな人ができても、その人に「嫌いです」と伝える必要はありません。特に転職したばかりの場合、味方になる必要はありませんが、あえて敵になる必要もないと思います。
どんな人でも、新しく転職してきた人から「嫌いです」と言われたら(とういう態度をとられたら)腹が立って厳しく接してしまいますよね?
とはいえ、転職したばかりの時期は直接会話したりコミュニケーションをとる機会が少ないと思います。もっとも簡単にできて効果的なのは、「表情」です。
怖い顔をしている人より、笑顔の人の方が「敵」として認識されにくいと思います。
転職したばかりのときは、合わない人(敵)をつくらないようにビジネスライクな人間関係を心掛け、慣れてきたら合う人(味方)を探していくといいと思います。
人間関係がうまくいかなくて転職した場合も、一度リセットされた環境で前の職場での反省をぜひ生かして下さい。
新人病院薬剤師が一年目でやることは別の記事にまとめています。
まとめ
ここまで、病院から病院に転職する際に失敗しないための
- 転職「前」にやるべきこと
- 転職「する時」にやるべきこと
- 転職「後」にやるべきこと
について解説してきました。
病院から病院への転職は人生で何度も経験するものではありません。
私は一度病院から病院へ転職しましたが、「転職先を探して終わり」ではなかったです。薬剤師として将来どうなりたいのか、そのためにいつどういう場所に転職するべきか考える必要があると思いました。
そして、転職が成功と言えるかどうかは、実際に転職した後にかかっていると感じました。
個人的な経験や感想たっぷりで解説しましたが、みなさんの病院薬剤師人生に少しでも役に立てると幸いです。
病院薬剤師が年収を上げるには、職場選びが重要です。
このサイトでは、病院薬剤師が年収をあと150万円あげる3つの力について解説しています!
3つの力のうち、本当に知っておいてほしい「職場」の力について現役病院薬剤師やくごろうがまとめています。