- どの認定を取るか迷っている
- どうしたら認定を取れるか知りたい
- 認定試験に受かるか不安
病院薬剤師のスキルアップとして認定を取りたいけど、どの認定にするか、取るための具体的なコツなど情報は意外と少ないですよね。
私は認定をどれにするか色々迷った結果、NST専門療法士の認定を取得しました。
今でも、この認定を取って正解だったと思っています。
この記事では、実際にNST専門療法士の認定を取得した現役病院薬剤師のやくごろうが、認定を選んだ理由や条件、認定試験、勉強法など実体験をもとに解説します。
この記事が、みなさんのスキルアップとしてNST専門療法士取得までの近道になれば幸いです。
薬剤師のみでなく、栄養士、看護師、リハビリの方々も必見の記事です。
NST専門療法士とは
“栄養療法”についてスキルアップの証!
NST専門療法士(栄養サポートチーム専門療法士)とは…
日本臨床栄養代謝学会が「静脈栄養・経腸栄養を用いた臨床栄養学に関する優れた知識と技能を有しているとみなす」ための認定制度
日本臨床栄養代謝学会より
“栄養療法”に関する認定制度で最も有名な資格です。
薬剤師のみでなく、管理栄養士、看護師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師など多くの職種共通の資格です。
薬剤師では輸液やTPNの分野として有名ですね。
NST専門療法士のメリット
どの疾患領域でも使えて更新がラク!
栄養療法はどの診療科、どの疾患でも必要な医療です。このため、あなたがどのような施設・分野で働いていても、必ず役に立ちます。
専門領域が特定の疾患になる認定(がん、精神科、妊婦授乳婦など)は、その業務に従事していなければ認定取得や更新が難しいです。せっかくのスキルが無駄になってしまうことも少なくありません。
”認定をとったのに業務から外れた”
”更新のハードルが高くて更新できなかった”
という方もたくさんいました。
認定取得の際は、取得した後の維持のしやすさを必ず考えましょう!
NST専門療法士はどこでも必要とされるスキルであり、更新に症例や学会発表などが不要なため、維持しやすい認定です。認定取得と更新の条件を下記にまとめます。
また、この認定は“栄養サポートチーム加算”の算定に必要な「栄養管理に係る所定の研修を修了した常勤薬剤師」を満たすため、病院側にもメリットがあります。
NST専門療法士取得の条件
※わかりやすいように抜粋していますので、正確な情報は学会Webサイトを参照ください
新規取得条件
- 認定対象国家資格:管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師
- 5年以上の実務経験
- 学会・研修会単位:合計30単位以上
- 認定教育施設で合計40時間の実地修練
- 認定試験に合格
一番のハードルは「④認定教育施設で合計40時間の実地修練」ですね。
更新条件
- 学会員を継続していること
- 学会・研修会単位:合計30単位以上
- 認定期間中に2年以上の実務経験
単位があれば、症例や学会発表もいらないですね。
新規取得までの流れ
単位の集め方
新規取得には、合計30単位が必要です。
この30単位のうち、
- 日本臨床栄養代謝学会の学術集会(毎年2~3月)の10単位
- NST専門療法士受験必須セミナー(年数回開催)の10単位
は必須単位として含める必要があります。
残りの10単位は地域支部会の学術集会(年1回、5単位)でなどでもOKです。
やくごろうは、
・学術集会×2回+受験必須セミナー×1回でクリアしました。
学術集会2回は2年間かかるため、時間がない方は、
・学術集会×1回+受験必須セミナー×2回でもいいかもしれませんね。
実務経験5年未満の若手の方は、5年経過するまでに集めておきましょう!
認定教育施設で実地研修
これが認定取得の最も高いハードルだと思います。
認定教育施設は日本臨床栄養代謝学会のWebサイトに掲載されています。
もしあなたの勤務先が認定教育施設でない場合、合計40時間認定教育施設に行って研修を受ける必要があります。
40時間をどのスケジュールでいつ行うかは、認定教育施設それぞれで異なります。
- 1日8時間×特定の期間の5日間
- 行ける時に行って、合計40時間になったら終了
など、本当にそれぞれです。
近くの認定教育施設がどのスケジュールで行っているかは、直接確認するようにしましょう。
受け入れ可否やスケジュールは、それぞれの施設のホームページにも書いていないことが多いので、メールや電話で問い合わせると確実です。
ちなみにやくごろうは…
学会でポスター発表をしていた認定教育施設の方を見つけて、お話を聞いたのがきっかけでした。
研修中に経験した症例を1例提出することになるので、あらかじめ意識して研修を受けるようにしましょう。
NST専門療法士認定試験
実務経験、単位、研修を乗り越えた方の最後のハードルです。
一度取れば一生ものですので頑張りましょう!
- 開催時期:毎年11月初旬頃
- 問題形式:5つの選択肢から1つ選ぶマークシート
- (たしか…)80問/2時間
合格率は、毎年7割程度といわれています。
(学会ホームページ;認定試験合格者一覧から大体で計算も可能)
NST専門療法士認定試験を受けた感想
薬剤師にとっては有利かも
試験問題の多くは、
- 栄養の代謝(生化学)
- 病態生理
- 必要栄養量や投与方法
が中心のため、薬剤師、栄養士、看護師は日常でも使う知識が多かった印象でした。
薬剤師であれば、栄養の代謝(生化学)は一度大学で学んだことがあるので、他の職種よりも特に有利だったと思います。(知り合いのリハビリ科の方は苦労されていました…)
合格率約7割の中でも、職種で結構偏りがあるかもしれませんね。
全体的に過去問題集と似たような内容であり、テキストを読み込むというよりは過去問題集をいかに理解して解けるかが重要だと思います。
出題根拠の多くを占める静脈経腸栄養ガイドラインも2013年の第三版から改定されていないので、毎年の大きな変化はないように感じます。
症例問題では、踏み込んだ症例などはなく、いわゆる標準治療の話でした。
身体の構造や生化学は自分も苦手な分野でしたが、過去問題集で似たような問題が出ていることがほとんどでした。
消去法で選択肢を消していけば、かなり確率も上がると思います。
電卓で計算するような問題はないので、時間も焦らずにできるくらいだと思います。
試験会場でも、終了時間が近くなった時はほとんど鉛筆の音はありませんでした。
NST専門療法士おすすめ試験勉強法
認定試験対策として実際に使った本と勉強法を紹介
- 【必須】一般社団法人日本静脈経腸栄養学会 NST専門療法士認定試験 過去問題集I
これらの問題は理由まで意識して解けるようにしましょう。 - 【必須】日本静脈経腸栄養学会認定試験基本問題集
少し古い(2012年)ですが、こちらでも想定問題が解説されているので勉強することをオススメします。 - 【必要な時に】一般社団法人日本静脈経腸栄養学会 静脈経腸栄養テキストブック
分厚い教科書です。病院の書籍として置いてもらい、問題集の+αとして使うといいと思います。 - 【さっと目を通す】静脈経腸栄養ガイドライン 第3版
これは病院の書籍として置いてあるところがほとんどで、個人で購入するものではないと思います。内容をすべて読むのは難しいので、クリニカルクエスチョンは無料ダウンロードできるので、ある程度知識がついたところでさっと目を通しましょう。
まずは過去問題集、基本問題集で解説をしっかりと理解し、根拠をもって問題を解けるようになりましょう。
その上で分からない点はテキストブックで内容を確認しましょう。
ある程度体系的な知識がついたところで、テキストブックとガイドラインのクリニカルクエスチョンを一通り目を通すと良いと思います。(最初から熟読すると心が折れそうになります)
実際に担当する患者さんの標準的な栄養療法は常に意識しておくといいと思います。
これが認定取得者にもっとも必要なスキルかもしれません。
薬剤師の年収を上げるスキルアップの力
今回の記事では、病院薬剤師にオススメのNST専門療法士について紹介しました。
どの領域でも必要とされ、更新しやすく、診療報酬算定で病院のメリットにもなるおすすめの認定です。
一方で、認定取得には「認定教育施設での実地研修」という大きなハードルがあります。
逆に考えると、取得できた人を必要としている病院も多いと思います。
認定取得は年収を上げるためのスキルアップの力になることでしょう。
このサイトでは、病院薬剤師が年収をあと150万円あげる3つの力について解説しています!
3つの力のうち、本当に知っておいてほしい「スキルアップ」の力について現役病院薬剤師やくごろうがまとめています。