- 残業が多くてつらい
- そもそも残業代が出ない
- 残業代が出ない職場には絶対に行きたくない
仕事を頑張る薬剤師が、残業について悩むケースはとても多いです。
病院薬剤師として働く私は、前職場では残業の申請がしにくい雰囲気があり、「自己研鑽」として処理せざる得なく、あまり残業申請できませんでした。
転職した今の職場は残業がキッチリ出るので、年収が上がり仕事も前向きに頑張れるようになりました。
そこでこの記事は、「薬剤師の残業事情と残業代が出ない職場を見抜く2つの方法」として、実際にあった訴訟例も踏まえて解説します。
この記事を読めば、残業が発生しやすい業務の特徴と、残業代がでないブラックな職場を見抜く方法がわかります。
さらに、訴訟になった事例を知ることで上司と相談する際の武器を手に入れることができます。
残業が出ない職場は絶対に避けましょう!
薬剤師の職種別:残業事情
厚生労働省の令和元年度令和元年賃金構造基本統計調査によると、薬剤師のひと月あたり平均残業時間は11時間です。
しかし、職種によって残業時間に特徴があります。
下記のグラフは、
残業時間の分布を「薬剤師全職種」、「病院」、「薬局」、「企業」ごとにをまとめたものです。
※職種別残業時間の内訳は
薬プレッソ/株式会社メディウェル
のデータを引用しています。
ざっくりとした感覚としては
病院 | 他の職種に比べ、残業時間が長いことが多い |
薬局 | 多くは~10時間に収まり、20時間越えは少ない |
企業 | ピンキリだが36協定(30時間/月)の範囲内に収める |
ということがわかります。
やくごろうの肌感覚ともだいたい一致しています。
薬剤師の職種別:残業理由
職種ごとのざっくりした残業事情に加えて、職種によって「残業になりやすい業務」に特徴があります。
- 病院薬剤師
- 薬局
- ドラッグストア
- 製薬企業
それぞれの職種について、残業理由と残業になりやすい業務の特徴を解説します。
職種別の残業理由①病院薬剤師
病院薬剤師の残業理由としては、下記のものが多いです。
- 病棟業務
- 委員会業務
- 勉強会
それぞれについて解説します。
病院薬剤師の残業理由①病棟業務
病棟業務は、入院患者の持参薬の確認、指導歴などカルテ記録、入院患者のフォローなど業務の幅が広いです。
単純に業務量が多いことに加え、
- 緊急入院など時間外の対応もある
- 医師が外来や手術が終わってから指示を入れる
- カルテ記載が本当に時間がかかる
- どこまでやればOKというゴールがない
- 他の人が手伝える業務が少ない
などにより、残業が増えます。
病院薬剤師の残業理由②委員会業務
病院には多くの委員会やチーム医療などがあります。
薬剤師もチーム医療の一員として参加しますが、そのほとんどはルーチン業務以外で行われるため、委員会業務は時間外で行うしかありません。
日中はルーチン業務の歯車の一つですからね
委員会の資料作成やデータ集めなど、かなり時間がかかります。
病院薬剤師の残業理由③勉強会
病院内で勉強会を行っている病院は多いです。
自己研鑽とはいいつつも、たいてい強制参加の空気があります。
残業として認めてくれればとてもいい方で、多くは自主的に参加する「自己研鑽」の扱いとして残業代は発生しません。
逆に、調剤や外来業務は締め時間が決まっていますね。
職種別の残業理由②調剤薬局
〇時~〇時とシフトで交代が決まっている場合や、薬剤師同士で助け合える職場であれば残業が少なくて済む場合があるのが調剤薬局の特徴です。
調剤薬局の残業理由としては、下記のものが多いです。
- クリニックの診察時間が延びる
- 在宅医療の準備
- 薬歴作成
- 棚卸
それぞれについて解説します。
調剤薬局の残業理由①クリニックの診察時間
調剤薬局を閉める時間は、門前のクリニックの診察時間に依存します。
クリニックの診察も人を相手にしているので、なかなか時間通りに終わることはないです。
クリニックの診察が終わっていないのに薬局を閉めたら、患者が困りますね。
調剤薬局の残業理由②在宅医療の準備
在宅医療を行っている薬局の場合、
- 在宅用の薬を一包化で準備
- 薬歴の作成
などをしなければなりません。
そして、この業務は日中の優先順位が低いため、ルーチン業務が終わった時間外に行うことが多いです。
これが理由で在宅医療を行っている薬局を嫌がる人もいますね。
調剤薬局の残業理由③薬歴作成
投薬する人数が多ければ多いほど、薬歴を書かなければなりません。
待っている患者が多いと、薬歴は後回しになります。
そして、あなたが溜めている薬歴は他の薬剤師が手伝うことができません。
調剤薬局の残業理由④棚卸
調剤薬局では、薬の在庫数を数える棚卸は一大イベントです。
薬の在庫を1錠単位で数える作業は日中にはできないので、時間外で行っている薬局がほとんどです。
職種別の残業理由③ドラッグストア
ドラッグストアは、一店舗当たりの薬剤師数が少ないという特徴があります。
このため残業も多くなりやすく、「みなし残業」制度にしているドラッグストアも多いです。
ドラッグストアの残業理由としては、下記のものが多いです。
- 営業時間が長い
- 自分の代わりがいない一人薬剤師
それぞれについて解説します。
ドラッグストアの残業理由①営業時間が長い
単純に営業時間が長く、営業時間内は残業として処理されられるケースがあります。
日中はレジや品出しなどのルーチン業務もあり、薬剤師しかできない仕事を後回しにしてしまうと残業になります。
ドラッグストアの残業理由①自分の代わりがいない一人薬剤師
ドラッグストアで一人薬剤師の場合、薬剤師の仕事はあなたにしかできません。
どんなに大変でも、助けてもらえないどころか気づいてすらくれません。
職種別の残業理由④製薬企業
企業によってピンキリですが、コンプライアンスを遵守している企業が多いため、
36協定(年間360時間=月30時間)
に収めるようにしている会社が多いです。
しかし、MRの仕事時間は医師のアポイントに依存するため、時間内に収まらないケースがほとんどです。
このため「みなし残業」制度にしている企業も多いですね。
残業になりやすい薬剤師の仕事に共通する特徴
職種ごとに仕事内容は違いますが、残業になりやすい仕事に共通する特徴として、
- ルーチンワーク以外の業務
- 一人でしかできない業務
があります。
薬剤師が残業で裁判!2つのケース
薬剤師が残業代の不払いに対して起こした裁判を二つ紹介します。
病院薬剤師の”研修”も残業認定
都立病院の賃金未払いの事例
概要:都立病院薬剤師が賃金未払・パワハラを提訴し、職場改善の約束と80万円の解決金で和解
2019年9月、東京都立墨東病院で勤めていた薬剤師が、
夜勤練習
勉強会への強制参加
前超勤(勤務時間以前から出勤させること)
タイムカード打刻後の残業の強要といった無給の残業の強要に加え、「上の人たちはできていた仕事ができていない。能力がない。」といった言葉が毎日のように投げかけられる、有給休暇取得を妨害するといったパワーハラスメントが行われていた、として東京地裁に提訴したという内容です。
和解内容
東京都の11項目にわたる職場改善の和解条項の第1項は、東京法律事務所のwebサイトに掲載されています。
やくごろうがざっくりまとめると、
- 業務時間の前後で行った業務は超過勤務として認めること
- たとえ一年目の研修であっても超過勤務である
- 当然、夜勤見学と休日勤務見学も手当をつけなさい
- 患者の服薬指導記録作成や科内環境整備も超過勤務
- 時間外の勉強会は義務づけないなら、参加しなくても非難しないこと
- 有給は病院運営に著しい支障がない限りは認めなさい
※やくごろうは法律の専門家ではないので、詳しくは出典をご確認下さい
病院薬剤師が学ぶべき教訓
病院薬剤師には、「自己研鑽」という曖昧な時間があります。
- 「研修中だから、仕事じゃなくて勉強だよね」
- 「先輩薬剤師だったら、こんなに時間はかからない」
という暗黙のルールがあり、残業代を申請できない空気がある職場があります。
私が新人薬剤師だった頃も、全く同じ空気がありました。
さらに、そのつらさを経験した薬剤師が先輩になった時に、
「私の頃は自己研鑽だったから、あなた(新人)もそうだよね」
と受け継がれていきました。
“自己研鑽”は「自分のスキルアップのため」にするはずが、いつの間にか「職場で自分の立場を守るため」になっている職場は少なくないと思います。
今度、この和解条項を上司に読んでもらおうと思います。
調剤薬局薬剤師のみなし残業
調剤薬局で「みなし残業代」が残業代の代わりであると認められた判例
概要:調剤薬局のみなし残業代は残業代の一部として有効か争われ、最高裁判所で残業代の一部として認める判決
2018年に調剤薬局で勤務していた薬剤師が、定額残業代を上回る手当の支給があったか確認できないとして残業代の精算を求めて会社を提訴したものです。
最高裁判所の判決
みなし残業代の超過していない部分の有効性が争われ、みなし残業代は残業代として有効と認める判決。
やくごろうがざっくりまとめると、
- 適切に契約されたみなし残業代は、残業代の一部として有効
- みなし残業が有効であるには、超過分が適切に支払われなければならないことが労働基準法第37条で定められている
- 賃金のうち、みなし残業代がどの部分なのか明確にされている必要がある
※やくごろうは法律の専門家ではないので、詳しくは出典をご確認下さい
薬局薬剤師が学ぶべき教訓
調剤薬局やドラッグストアでは、みなし残業代制度を採用している職場があります。
みなし残業代の制度自体は有効なのもですが、あなたのみなし残業代がどの部分を指しているのか確認しましょう。
みなし残業代の超過分は、支払われることが「当然」として裁判が進められていたようです。
薬剤師の残業代が出ないブラック職場を見抜く2つの方法
残業代について法律や制度は整っているのかもしれませんが、現実は厳しいです。
残業が多いのはつらいですが、働いたのに残業代が出ないのはもっとつらいです。
- 違法だけど残業代が出ない
- 残業代が申請できる空気ではない
という職場も少なくないです。
そこで、薬剤師の残業代が出ないブラックな職場を見抜く2つの方法を紹介します。
- 残業時間と帰宅時間を比べる
- 残業の申請方法
それぞれ解説していきます。
薬剤師の残業代が出ないを見抜く①残業時間と帰宅時間を比べる
残業時間の実績と、帰宅する時間を比べましょう。
この記事でも書いた通り、薬剤師には「自己研鑽」という独特な風潮があります。
都立病院の事例のように、「タイムカードを切ってから残務をする」という職場は少なくないです。
残業時間:月10時間(0.5時間/day)
帰宅時間:毎日19時
上記の場合、毎日1.5時間/dayのサービス残業が発生している可能性があります。
薬剤師の残業代が出ないを見抜く②残業の申請方法
残業代の申請方法は、残業代の申請しやすさに直結します。
残業代の申請方法は大きく2パターンに分かれます
- 事前許可制
- 事後承認制
残業の申請方法:①事前申請制
「これから〇〇時間残業しますが、いいですか?」
と申請するパターンです。
しかし、こちらの職場は残業代を申請しにくい場合が多いです。
申請するのが厳しくて苦手な上司の場合、
「申請したら怒られそうだな…」
「嫌味を言われるくらいなら申請しなくていいや」
となりやすいのがこのパターンです。
法律上は事前申請しなくても残業代は発生しますが、後から自分だけ申請するのは気が引けます。
残業の申請方法:②事後承認制
「昨日○○時間残業しました」
と後で申告して承認してもらうパターンです。
こちらの職場の方が、圧倒的に残業代を申請しやすいです。
多少嫌味を言う上司はいるかもしれませんが、原則「やったことは事実」なので、申請しやすいです。
上司からすると、「もみ消した」と言われかねないので、よっぽどのことがなければ承認しないということはないでしょう。
基本的には、事後承認制>事前許可制の方が残業代が申請しやすいです。
職場見学の時に必ず確認しましょう!
まとめ:薬剤師が残業で悩んだらやるべき2つのこと
- 残業が多すぎる
- 残業しているのに残業代がでない
残業で悩む薬剤師は本当に多いです。
薬剤師が残業で悩んだらやるべき2つのことをまとめます。
- 上司に残業の申請について相談
- 残業が少なく残業代も出る職場に転職
薬剤師が残業で悩んだら:①上司に残業代の申請について相談
まずは上司に相談しましょう。
多くの場合、残業を認めるかどうか判断するのは直接の上司です。
「どこまでを残業とするのか」、都立病院の訴訟事例をもとに相談するとよいでしょう。
そして、相談したことは必ず記録しておきましょう。
しかし、気軽に相談しやすい上司なら、そもそも残業について悩んでいないかもしれませんね…
薬剤師が残業で悩んだら:②残業が少なく残業代も出る職場に転職
いち薬剤師のあなたが職場に改善を申し入れしても、改善する職場は少ないです。
都立病院の薬剤師のような勇気があれば別ですが…
基本的に、「他人は変えられない」です。
- 残業時間が短い
- 残業代は働いた分キッチリ出る
こんな職場はたくさんあります。
つらい場合は転職しましょう。残業代は薬剤師の収入を大きく変えます。
- 都立病院の薬剤師のような勇気なんてない
- まして、転職する勇気すらない
こんな方は、転職エージェントに相談して「自分の市場価値」を診断しましょう
自分の市場価値を診断することで、
- もし転職したら年収どのくらいになるか
- 残業代がキッチリでる職場が本当にあるのか
知ることができます。
気に入る職場がなければ、
転職しなければいいだけです。
転職エージェントを利用する薬剤師は一切無料なので、デメリットは「手間がかかる」だけです。
- やりとりが面倒くさそう
- しつこく転職を勧められそう
転職エージェントを実際に利用した人の体験談を調べても少なったので、私もそう思っていました。
どのくらい手間がかかるのか、実際に転職サイト経由で転職エージェントを利用してみましたが、そんなに手間はかからなかったです。
そしていい転職先がなかったので、今の職場をそのまま続けています。
やくごろうが市場価値の診断をした体験は別の記事で詳しくまとめています。
>>>【リスクなし】薬剤師が自分の市場価値を診断するたった1つの方法
つらいサービス残業から解放される可能性が少しでもあるなら、やってみる価値があります。
繰り返しですが、気に入る職場がなければ、転職しなければいいだけです。
やくごろうも残業で悩む薬剤師の一人でした。
私には都立病院の薬剤師のような勇気はありませんでしたが、他にも残業で悩む薬剤師の役に立てれば幸いです。
病院薬剤師が年収を上げるには、職場選びが重要です。
このサイトでは、病院薬剤師が年収をあと150万円あげる3つの力について解説しています!
3つの力のうち、本当に知っておいてほしい「職場」の力について現役病院薬剤師やくごろうがまとめています。