新薬やニュースざっくりまとめ

新薬勉強ざっくりまとめ2021年7月28日



こんな方へ
  • 新薬がどんどん出てきて、毎回把握しきれない!
  • 新薬のどの情報が重要かわからない!
  • 今後その新薬を扱うかわからないし、まず要点だけ知りたい!

毎日激務の薬剤師は、新薬の情報をタイムリーに把握することはほとんど無理ですよね。私は病院薬剤師として大規模総合病院で勤務していますが、今後扱うのかもわからない全ての新薬を調べる時間がないので、ざっくり特徴だけ把握することにしました。

そこで、この記事では新薬の特徴と要点をざっくり簡単に現役病院薬剤師やくごろうが解説します。

この記事を読めば、これから世の中に出てくる新薬について時間をかけずに勉強でき、いざ必要になったときに調べることがとても楽になります。

毎日激務で、新薬について簡単に把握したい薬剤師の方におすすめです!

2021年7月28日、厚生労働省 薬事・食品衛生審議会第一部会が開催され、新薬の承認可否が審議されました。

※ざっくりまとめ用ですので、正式な名称や用法用量は参考資料などから確認お願いします。

※正式承認は未ですので、ご注意ください。

フェントステープ

小児適応追加申請

成分名:フェンタニルクエン酸塩

メーカー:エーザイ

申請適応:再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)

小児(2歳以上)について適応追加の申請。

初回用量は
6歳以上の小児:~6mg
2歳以上6歳未満:~2mg

海外では米国など4か国でフェンタニル貼付剤が適応あり。

やくごろう

小児にはトラマドール、コデインは適応ないですね。

ウプトラビ錠

外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症の適応追加

成分名:セレキシパグ

メーカー:日本新薬

申請適応:外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症

すでに適応取得していた「肺動脈性肺高血圧症」に加えて、「外科的治療(PEA)不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)」

に対して適応追加の申請。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)のように肺動脈そのものに原因があるのではなく、肺の血栓が原因となるため外科治療やバルーン肺動脈形成術が第一選択。

やくごろう

アデムパス(リオシグアト;可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬)に次ぐ適応取得。

下記のやくごろうPick upでも解説します。

ダラキューロ配合皮下注

全身性ALアミロイドーシスに対して、多発性骨髄腫に次ぐ適応追加

成分名:ダラツムマブ/ボルヒアルロニダーゼ アルファ

メーカー:ヤンセンファーマ

申請適応:全身性ALアミロイドーシス

ダラザレックスの皮下注製剤。先日適応取得した「多発性骨髄腫」に次いで、全身性ALアミロイドーシスに対してボルデゾミブ、デキサメタゾン、シクロフォスファミド併用で適応追加申請。

これまで、本邦では全身性ALアミロイドーシスに適応ある医薬品はなかった。海外では、シクロフォスファミド、ボルデゾミブ、デキサメタゾンの併用(CyBorD)療法が標準治療としてNCCNガイドラインで推奨されていた。

今回、(CyBorD)療法に対するダラキューロ配合皮下注の上乗せ効果が認められたため適応追加承認。

ダラキューロの特徴である、点滴時間を短くするヒアルロニダーゼの技術は別の記事で詳しくまとめています。
>>>Halozyme社($HALO)の新技術;抗がん剤の点滴時間を短くする

フォシーガ錠

慢性腎臓病に対して適応追加

成分名:ダパグリフロジン

メーカー:ヤンセンファーマ

申請適応:慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)

糖尿病(2型・1型)、慢性心不全に次ぐ適応追加申請。

腎近位尿細管における SGLT2 を阻害し、糸球体血行動態の改善による腎保護作用によると考えられている。

エビデンスは下記のやくごろうPick upで詳しく解説します。

ラニビズマブBS硝子体内注射用キット

ルセンティス硝子体内注射のバイオシミラー

成分名:ラニビズマブ

メーカー:千寿製薬

申請適応:中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、病的近視における脈絡膜新生血管

ルセンティス硝子体内注射の世界初バイオシミラー。

薬価:ルセンティス160,698円/V

ルセンティスの適応のうち、未熟児網膜症、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫は適応申請未。

やくごろう

ルセンティスのエビデンスは「最高矯正視力スコア」の改善です。

<報告品目>

リクシアナ15mg

心房細動による血栓予防の最低用量30mg→15mgへ引き下げ

成分名:エドキサバントシル酸塩水和物

メーカー:第一三共

申請適応:非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制

体重60kg以下:30mg

体重60 kg超:60 mg
なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する。

とされていた用量に、

「出血リスクが高い高齢の患者では、年齢、患者の状態に応じて1日1回15mgに減量できる。」が追加。

15mgは下肢整形外科手術施行患者の血栓予防のみ適応であり、ほとんど入院患者のみに使用していたものが、心房細動の追加により外来患者でも15mgの処方が増えそう。

薬価
60mg錠:416.8円/錠
30mg錠:411.3円/錠
15mg錠:224.7円/錠

やくごろう

15mgは薬価が安いですね。

イヌリード注

18歳以下の小児での使用が適応追加

成分名:イヌリン

メーカー:富士薬品

申請適応:糸球体ろ過量の測定による腎機能検査

小児においては成長に伴った体格変動に対応した投与量が規定されていなかったため、今までは適応がなかった。

今回、体格に合わせた投与方法が承認され小児でも使用可能に。

ニトプロ持続静注液

急性心不全、高血圧性緊急症における小児適応の追加

成分名:ニトロプルシドナトリウム水和物

メーカー:丸石製薬

申請適応:急性心不全、高血圧性緊急症

急性心不全、高血圧性緊急症における小児適応の追加

日本小児循環器学会及び日本小児麻酔学会より公知申請とされていた小児への使用に対して承認申請。

やくごろう

その他の適応に、「手術時の低血圧維持」、「手術時の異常高血圧の緊急処置」があり手術室でも使用されますね。

やくごろうPick Up新薬

①慢性血栓塞栓性肺高血圧症

肺高血圧症治療ガイドライン(2017 年改訂版)>日本循環器学会より抜粋、一部改変

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension; CTEPH
:急性肺塞栓症のまれな合併症。

残存した血栓が肺動脈の狭窄や閉塞

肺血管抵抗が上昇

肺高血圧症

のメカニズムと考えられています。

このため、CTEPH は肺動脈から器質化血栓を完全に摘出できれば根治が可能であり、外科的治療が標準治療となる点がほかの肺高血圧症(PAH)とは異なります。

手術の適応とならない症例に対しては,従来は肺血管拡張薬による内科的治療が行われてきましたが、近年はバルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty; BPA)が行われるようになり、外科的治療と同等の治療成績となっています。

CTEPH は本来、肺動脈性肺高血圧症(PAH)のように肺動脈そのものに原因があるのではなく、基礎疾患としてDVTや凝固能異常が存在し、肺に反復して血栓塞栓症をきたすことで肺動脈閉塞となり、閉塞した血管数が多くなるにつれて肺高血圧を呈するようになる疾患とされています。

やくごろう

肺高血圧症の原因が「動脈そのもの」か「血栓」かで大きく違いますね。

ちなみに、肺高血圧症(PAH)に対してはオプスミット(マシテンタン)などのエンドセリン受容体拮抗薬も適応取得していますが、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)には適応はまだありません。

②フォシーガの慢性腎臓病適応

フォシーガ(ダパグリフロジン)が「糖尿病(2型・1型)」、「慢性心不全」についで「慢性腎臓病」についても適応追加となりそうです。

ここで、SGLT-2阻害薬であるフォシーガ(ダパグリフロジン)の慢性腎臓病について承認の根拠となるエビデンスを確認します。

DAPA-CKD第Ⅲ相試験
>>>Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2020 Oct 8;383(15):1436-1446.

やくごろう

英語論文をざっくり読む方法については、別の記事で詳しく解説しています。

英語論文を読めるようになると、薬剤師人生変わります。是非試してみて下さい。
>>>【先輩に言えない】薬剤師が英語論文の読み方を実例で解説

Patient(対象患者)>

eGFR 25~75mL/min/1.73m2かつ尿中クレアチニン/アルブミン比 200~5000で4週以上ACE阻害薬またはARBを併用している患者。
2型糖尿病の有無に関わらない。
(主な除外基準:1型糖尿病、多発性嚢胞腎、ループス腎炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎)

Intervention(介入)>

フォシーガ(ダパグリフロジン)1日1回10 mg

Comparison(比較対象)>

プラセボ

Outcome(結果)>

主要エンドポイント

①~③いずれかが起こる複合イベントが39%低下(2型糖尿病の有無で差なし)

  1. eGFRの50%以上低下
  2. 末期腎疾患の発症(eGFR<15mL/min/1.73m2)
  3. 腎臓または心臓血管の原因による死亡

副次的エンドポイント

  • 腎機能低下イベント(eGFRの50%以上低下、末期腎疾患の発症、腎臓の原因による死亡のいずれか)低下
  • 心血管系の原因による死亡または心不全による入院低下
  • 全死亡率低下

上記が認められたため、試験は有効中止となっています。

腎保護作用としては、「ナトリウム利尿とブドウ糖誘発浸透圧利尿によって、糸球体内圧の低下につながるため」と考察されています。

また、糖尿病の既往がない患者では、低血糖の有害事象は認められていません。

やくごろう

試験の結果から考えると、「eGFR 25~75mL/min/1.73m2の腎機能低下患者に対して、ACE阻害薬またはARBに上乗せ」が位置づけとなりそうです。

過去の新薬まとめ記事や、病院薬剤師が年収を上げるための「スキルアップ」の力はこちら

過去の新薬まとめ記事はこちらでまとめています。

>>>新薬やニュースを勉強するざっくりまとめ

このサイトでは、病院薬剤師が年収をあと150万円上げる3つの力について解説しています!
3つの力のうち、本当に知っておいてほしい「スキルアップ」の力について現役病院薬剤師やくごろうがまとめています。

主な参考情報

厚生労働省;薬事・食品衛生審議会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/indexshingi.html

ミクスオンライン(簡単に無料で見れるニュース)
https://www.mixonline.jp/

日刊薬事(薬事・食品衛生審議会の議題は無料)
https://nk.jiho.jp/